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「東京怪談 インヴィジブル・ストーカー」オープニング

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【東京怪談】インヴィジブル・ストーカー オープニング画像

●オープニング

「君達が、雇われ人か」
 そう言うと、黒髪の些かきつい顔立ちをした美女は、ソファに腰掛け高々と足を組んだ。半眼に閉じられた碧の瞳が、さらりと回りを一瞥する。
「マヌケ面が揃いも揃ったもんだな。物好きか、暇人か?」
「ご主人様!」
 客人に茶を振舞っていた黄金の瞳の少年が、慌てたように言う。
「んもー、折角ご紹介いただいた方々なのに、初手から喧嘩売るような真似は止めてくださいよ…」
「事実を言ったまでだ。第一、勝手に依頼なんぞしたのは、お前だろうが」
「そりゃそうですけどォ…」
 清清しいまでに横柄な主人に、世話係の少年は困ったように溜息をついた。


 女は翡翠、少年はベルと名乗った。翡翠は巷では評判の占師であり、ベルはその住み込み弟子ということであるが、みた所…体のいい小間使いとしてこき使われているようであった。
「まあ…ちょっと、困ったことがありましてね」
 きちんと姿勢を正すと、ベルがそう切り出した。
「最近、ご主人様が何者かの視線と気配を感じるというのです。ぶっちゃけた話、皆さんへのお願いはその視線と気配の主をつきとめて貰いたい、ということです」
 視線と気配は神出鬼没らしい。気がつけば部屋の隅に現れている。
 仕事中や食事中、はては着替えや風呂やトイレ睡眠中など、オフィシャル、プライベートに関わらずにそれは現れる。頻度は、夜の方が高いという。
 振り返ると、気配は消える。だが、背を向けると再び何者かがそこにいて、じっと翡翠を見ている。最初はノゾキかとも思ったらしいが、窓のない個室でも、同じ視線を感じることがある。
「力量不足ゆえに、一緒にいても僕はそれに気づいたことはないのですが…」
「全くだ。ちょっとは早く使いモノになれ、未熟者」
 翡翠の言葉は容赦ない。
「……ですが、皆様方ならばお願いできるかと。本当なら、ご主人様の占いで犯人を割り出せればいいのですが…どうも何かの負荷が働いているらしく、ココだけの話、その視線を感じ始めてから全く占いが当たらなくなっちゃってるんですよ」
 そう言ったベルの言葉を受け、憂鬱そうに翡翠が溜息をつく。
「まあ、占いに関しては適当に誤魔化して答えれば阿呆な連中ゆえに何とかなるが…」
 それって詐欺じゃないのか、とその場にいた全員が心の中でつっこむ。
「だがまああくまでも答えは間に合わせの適当だし、こんなことが長引いて的中率が低くなったという噂が次第に広まれば、確かに商売上がったりだしな。第一、こう始終誰かに見られているようでは、落ちつかないしイラつくしで肌が荒れる」
「ンなこと言ってる場合ですか!今朝なんか、僕が朝起こしに行った時、布団がズタズタに引き裂かれていたじゃないですか!羽根に埋もれてぐーすか眠っていらっしゃるのを見た時、肝が冷えましたよ!」
 そのベルの発言に、場の緊張が高まる。
「いいじゃないか、とりあえず無事だろう?」
「よくありません!次はご主人様がそうなる可能性もあるんですから!」
 そう憤然と答えると、ベルは改めて向き直った。
「ご主人様がいいというので、視線や気配の件はのんびりと放っておいたんですが…実害が起こった分、これからご主人様に危害が加わる可能性が出てきたとなれば事は急ぎます。…申しわけありませんが、どうぞ宜しくお願い致します」
 そして、ベルは深深と頭を下げた。


作画&原作:速水和希さん (ウェブマガジン「OMCマガジン」第1号)

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